住職の法話 第17回 一心

正信偈の一節より

広由本願力回向 為度群生彰一心

【読み方】広く本願力の回向に由って群生を度せんがために、一心を彰わす。

親鸞聖人は、天親菩薩のことを広く本願力の回向に由って、群生を度せんがために一心を彰すと述べて讃嘆しておられます。回向と言う言葉は如来のはたらきであり「差し向ける」とご理解下さい。
天親菩薩が、阿弥陀如来から凡夫に対して回向されている願い(本願)にもとづいて、群生を本願に目覚めさせるために、一心(信心)の意味を明らかにしてくださったのだと、親鸞聖人は教えておられるのです。
ここに言われている「群生」というのは、「衆生」という意味で「あらゆる生きもの」という意味です。それはつまり私たち人間=凡夫のことを言います。
次の「度する」というのは、「渡らせる」ということで、苦悩に満ちた状態から、苦悩が解消した状態へ導くことです。迷いの此岸から、覚りの彼岸へ渡らせることです。

天親菩薩は、苦悩する一切の凡夫を救いに導くために、「信心」の意味を明らかにしてくださっている、ということです。その「信心」を「一心」という言葉で言い表しておられるのです。

以前にも申し上げましたが、浄土真宗で言う信心とは一般的に使われている信心、例えば神様を信じるとかいう何かを信じる心ではなく、主体は阿弥陀如来です。私たちがする信心ではありません。私たちが自分勝手に各々の信心をするならば、それは一心ではなく無数の信心があるとなりますね。阿弥陀如来がいただく信心ですから一つしかないので「一心」となります。

なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ 合掌