住職の法話 第28回 新年の言葉
阿弥陀仏の慈悲に深く感謝申し上げます。2026年(仏暦2569年)の新年を迎えるにあたり、改めて現代社会が抱える課題を、浄土真宗の僧侶として考察し、未来への道筋を探るべく一筆させていただきます。
団塊の世代が後期高齢者となられた今、社会は新たな局面を迎えています。団塊の世代とは、戦後の苦難を乗り越え、日本の復興を担い、「高度経済成長」という時代を力強く推進した中心的な存在です。しかし時代が移り変わり、団塊の世代の方々が後期高齢者へと進むにつれ、その生き方、生き様、そして社会の在り方において、さまざまな問題が浮上しています。
団塊の世代が抱える課題と社会の問題。第一に、孤独の問題です。団塊の世代の方々は、従来の家族構成と異なり、核家族化や子世代の独立によって、伴侶や家族とのつながりを失い、孤独を深めるケースが増えています。また、年齢的な健康衰退により介護が必要となる現実も見逃すことはできません。さらに、配偶者を亡くされた場合や子どもとの疎遠により、社会的孤立を経験する高齢者も増加しています。
第二に、医療や介護の問題です。団塊の世代の人口が多いことから、医療・介護サービスの需要が急増しており、地域社会における支援体制が不足している現状があります。支え手である若い世代の負担が増大し、これがまた新たな社会問題として浮上しています。
第三には、人生の最終段階における不安の問題です。後期高齢者となった団塊の世代の方々は、周囲の「死」に触れる機会が増え、生きる意味や死後への不安を抱えることが多くあります。「自分がこの世に何を残すのか」という問いや、「次の世代へ何を引き渡すべきか」といった悩みもまた、団塊の世代特有のものと言えるでしょう。
浄土真宗の教えでは、「阿弥陀仏の大慈悲」によって、すべての人々はそのままで救われる存在であると説かれています。救いは、努力や功徳によるものではなく、我々に備わった「あるがまま」の姿を阿弥陀如来が受け止めてくださるという深い安心です。この教えを踏まえ、次のような解決の道筋を提起したいと考えます。
1. 孤独対策としての「つながりの再構築」
孤独の問題に対しては、人と人とが支え合う「つながり」を強化する取り組みが必要です。地域社会において、寺院がコミュニティの中核として「寄り合い」の場を提供し、交流を促進することが求められます。法話会や念仏会を通じて、互いに語り合い、阿弥陀仏の慈悲に触れる機会を提供することで、心の孤独が解消されると信じます。また、SNSなどデジタルツールを活用し、遠方に住む家族との絆を保ちつつ、何気ない日常を共有する工夫も大切です。
2. 医療・介護の問題への寺院の役割
地域社会における医療・介護体制の不足について、寺院は「心のケア」の役割を積極的に果たしていくべきです。僧侶が定期的にご高齢者を訪問し、話を聞き、念仏を伝える「傾聴法話」を実施することで、精神的な不安や孤独感を和らげることができると信じます。また、寺院を地域医療・介護施設との連携拠点として整備し、寺院が高齢者支援のハブとして機能することで、地域全体の福祉を向上させることができるでしょう。
3. 人生の最終段階への安心と信仰
「死」への不安を乗り越えるためには、浄土真宗の教えによる「往生安心」が重要な鍵となります。「阿弥陀仏のお慈悲によって浄土に生まれ、生を超えた安らぎを得る」という教えは、一人ひとりがその存在を受け入れる力となります。寺院が終活や葬儀についての情報を発信し、死に向き合う安心感を提供する場となること、また現世で「自分の本当の姿」を見つめるための場として機能することが大切です。
共生の未来へ。団塊の世代と若い世代のつながりも大切と考えます。これらの課題解決には、団塊の世代と若い世代の相互理解と協力が不可欠です。団塊の世代が抱える経験や知識を次の世代に伝えていく場を寺院が提供し、若い世代が高齢世代を支える中で、それぞれが共生できる社会への道を共に歩むことを願っています。
2026年が、すべての人々にとって慈悲と安心に包まれる一年となりますことを、阿弥陀仏のお力に願いながら、本年も皆様とともにお念仏の道を歩んでいく所存です。
南無阿弥陀仏
令和8年(2026年)元旦
光照寺 住職 宮本龍太

