第12回 みなさんとお坊さんのおしゃべり会

今月は、住職から『歎異抄』を中心に、皆さまが日々抱え続けておられる煩悩と、それに向き合うための信心のあり方について丁寧にお話しいたしました。『歎異抄』は、親鸞聖人の弟子である唯円が師の言葉を記録した書物と言われており、仏教の中でも人間の弱さや迷いを真正面から受け止める内容が記されております。
煩悩とは単なる欲望や迷いではなく、誰もが生まれながらに抱えている心のはたらきであることを示させていただきました。煩悩を否定するのではなく、それを抱えたまま阿弥陀仏の救いに身を委ねることこそが、真の信心につながるのだと説かせていただきました。信心とは、特別な修行や努力によって獲得するものではなく、日常の中で自分の限界や弱さを認め、仏の慈悲にゆだねる心の姿勢であることを強調いたしました。皆さまが煩悩に振り回されるたびに、仏の教えを思い出し、そこに立ち返ることが大切であるとお伝えいたしました。
さらに、現代社会に生きる皆さまが直面される不安や孤独、競争心や欲望といった煩悩の具体例を挙げ、それらを「なくそう」とするのではなく、「あるがままに認める」ことの大切さを説かせていただきました。その上で、阿弥陀仏の本願に身をゆだねることによって、煩悩に翻弄される自分をも救い取っていただけるという安心感が生まれ、「安心して命を終えていく」仏教の道を示させていただきました。
今回のお話を通じて、煩悩と信心は決して相反するものではなく、むしろ煩悩を抱えた人間だからこそ信心が生まれるのだという視点を学んでいただけたかと存じます。聞法の場は静かで温かい雰囲気に包まれ、参加者それぞれが自分の心のあり方を振り返り、仏の慈悲に思いを馳せるひとときとなりました。