令和6年12月の言葉
詩人でもある谷川俊太郎さんが11月13日に92歳のいのちを終えられました。今月は谷川俊太郎さんを追悼として、「生きる」という詩から抜粋しました。
「生きているということ いま生きているということ 泣けるということ 笑えるということ 怒れるということ 自由ということ」
人間は「いま」が大切です。いま生きている瞬間を大切にという想いが伝わる詩です。その中で生きているのが当たり前ではなく、様々なご縁に有難く生かされている、おかげさまに気づきながら、あと僅かな本年を過ごしていきたいと思いました。
生きる(全文)
谷川俊太郎
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ